【マレーシア中国料理図鑑No.1】バクテー徹底紹介!

Weng Heong

マレーシアで愛される美味しい中国料理を1つずつ紹介していく「マレーシア中国料理グルメ図鑑」!今日ご紹介するのは、マレーシア系中国料理の中で最も有名な絶品料理バクテーです!

バクテーってどんな料理?

バクテーはぶつ切りの皮付き豚あばら肉や内臓肉を、漢方と中国醤油でホロホロになるまで煮込んだ煮込み料理。伝統的な豚肉のみのスタイルだけでなく、野菜やきのこ類、中国湯葉、厚揚げなどが入った物も多いです。バクテーという名称は福建語(閩南語)で「肉骨茶」を読んだ音「neg gug de」に由来します。

八角(スターアニス)やシナモン、クローブ、胡椒、ニンニクなど体に良い材料が豊富に使われていますが、この独特の中華臭い匂いが苦手な方もいるかもしれません。お店によってスパイスの効き具合は異なるので、気になるお店があったら訪れる前に口コミをチェックしておくことをオススメします。

また、名前には茶という漢字が入っていますが、実はバクテーに茶は使われていません。これは、豚の脂を溶かす目的で温かいお茶がバクテーと一緒に提供されることが多いということに由来していると考えられています。バクテー屋に行くと現地の人は殆どの人が温かいお茶を頼んでいるのが分かると思います。お茶の種類は様々ですが、脂肪吸収を抑える働きがあるとされている鉄観音茶がクラン地域では特に人気です。

バクテーの気になる歴史ですが、その発祥はマレーシアがまだ英国の植民地であった頃にまで遡ります。当時は中国本土よりやってきた福建省の人々が、マレーシアの港で肉体労働者として働いていました。彼らは故郷の料理に習い、安くて良い栄養補給源としてバクテーを生み出しました。低賃金で貧しい彼らは、解体した後に残った「削ぎ落しきれなかった肉片がついた骨」を利用したため、それが「肉骨」の名の由来になったとされています(※由来は諸説あり)。バクテーは彼らの朝ご飯として食べられていたため、今でもバクテー店は夕方には閉まってしまうお店が多いです。

この彼らが働いていた港町はKL近郊の街クランのことであるとされており、クランはバクテー発祥の地として広く知られることとなりました。現在でもクランには数多くのバクテー店が乱立しています。クランのバクテーは濃い醤油色で濃厚な風味の物であるという特徴があり、KL中心部にはクランバクテーの看板を掲げるお店も多いです。

バクテーの具材たち

お店によって多少異なりますが、バクテーの具材は大体以下の5つです。

①豚肉

バクテーにかかすことができないのがメイン食材である豚肉。皮付きの豚バラ肉や肩ロース肉、骨付きあばら肉に加え内臓なども用いられます。多くのお店では好きな部位を選ぶことができますが、ミックスで頼むのも一般的です。

②湯葉

日本人にも馴染みのある湯葉。表面がざらざらして食感があるぶ厚い湯葉が使われます。中国スタイルの湯葉は見た目が独特なので最初は何が入っているのか分からずびっくりしました。

③油揚げ

私が特に好きなのがこの具。旨味たっぷりのスープをパンパンに吸った油揚げは最高のおかずです。

④キノコ類

キノコも定番のバクテーの具。マッシュルームやエノキが使われていることが多いです。

⑤葉野菜

レタスや白菜などの葉野菜も一般的な具材。レタスは生のものを上にのせているものや、元々入れて煮込みクッタリさせたものもあります。

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上にはフライドオニオンが

ちなみに、バクテーレストランに行くと殆どの場所でレタス炒めが提供されていることに気づくと思います。オイスターソースやごま油などを使ってレタスをシャキッと炒めた一皿で、サイドディッシュとして多くの人が頼む料理です。バクテーの箸休めに最適なメニューなのですが、これだけで白ご飯3杯は食べられるほど美味しいです。

バクテーの種類

実はバクテーにはシンガポール発祥という説もあります。シンガポールのバクテーはマレーシアの物と見た目からかなり異なるもので、スープは透き通っていて、にんにくと胡椒が効いたスッキリとした味。豚のスペアリブが使われていることが多く、大きな肉がドーンと入った迫力のある見た目です。シンガポールスタイルは漢方の癖が少なめなので、日本人に人気があります。

発祥の地論争はまだ続いていますが、通説としては、マレーシア系のバクテーは福建省由来であるのに対し、シンガポール系のバクテーは広東省潮州出身の調理人の味に由来しているとされています。食べてみると分かりますが同じバクテーでも味はだいぶ異なるので、マレーシア在住日本人の間ではマレーシアスタイルのものが「黒バク」、シンガポールスタイルのものが「白バク」として親しまれています。

そしてバクテーが愛されているこの国、マレーシアはイスラム教の国。イスラム教では豚肉が禁じられており、加えて、マレーシアに多く住むインド系の人々も豚肉を食べない人が多いです。そんな人のために生まれたのが「チクテー」です。豚を鶏肉に置き換えた料理で、豚を食べられない人々に人気があります。他にもベジタリアンの人向けに豚をキノコに置き換えた「ベジタリアンバクテー」もベジタリアンレストランなどでしばしば見かけます。

また、ユニークな物としてドライバクテーというものがあります。特にクランで食べられるバクテーで、クコの実、乾燥ナツメヤシ、乾燥トウガラシやスルメ、オクラなどの材料が入った、汁気のない真っ黒な見た目をしています。ピリ辛で海鮮風味があるパンチの効いた味をしており、ご飯のおかずにぴったりです。日本人のファンも多いので是非こちらもお試しあれ。

上記で述べたように、マレーシアの多数派であるイスラム教徒は殆ど口にしないマレー系中国料理であるバクテー。そのため一部の政治家が、バクテーを国民食とすることに抵抗を示したというニュースも先日報じられました。ただ、様々な人種が入り混じって暮らす他民族国家であるからこそ、各文化の料理が尊重され、伝統として存続して欲しいと願うばかりです。

バクテーの食べ方

続いて、最初に食べるときは迷いがちなバクテーの食べ方についてご紹介します。スープバクテーを食べる際には刻みにんにくとチリ醤油が必須!

まず、卓上にある唐辛子とチリを小皿に入れて、醤油を加えておきます。続いて、ご飯の上にスープと共に豚肉をのせ、その上にチリにんにく醤油をかけて食べてみて下さい。端的に言って飛びます。

お店によっては卓上に調味料などを置いていないところもありますが、大体の場合お店の人に言えば持って来てくれるはずです。そのまま食べるのも勿論美味しいですが、この食べ方で更にバクテーのことが好きになるのは間違いないです。

またバクテーと言えば忘れてはいけないのは油条の存在です。油条とはカリモチの中華揚げパンですが、実はこの油条、どこのバクテー屋にも必ず置いてあります。この油条をバクテーのスープにたっぷり浸して食べるのが現地の人のこだわり。「ご飯も食べてるのに一緒にパンも食べるなんて…」と思うかもしれませんが、スープをたっぷり吸ったカリモチ油条は本当に美味しいので、是非一緒に頼んでみて下さい。

ちなみに、マレーシア旅行に来てもバクテーを試す時間が無いという方もいると思います。そんな場合は、スーパーなどで売っているバクテーの素を是非お試しください。ティーバッグなどにスパイスが入っていて肉と煮込むだけで簡単にマレーシアの本格的な味が再現できますよ!お土産としても勿論オススメです。

バクテーを食べよう!

以下はバクテーを食べられるレストランやカフェの一覧です。下の画像からリンクに飛べるので、興味のあるお店の情報をチェックして参考にしていただければ幸いです。

Weng Heong Bak Kut Teh Restaurant